工事場所は大阪府岸和田市新港町地内外で、阪神高速4号湾岸線から少し入った府道29号線(大阪臨海線)の横断工事で護岸すぐに位置します。地質は埋立地でもあり、砂礫、砂、粘性土の複層する地盤で、非常に難しい現場でした。障害物である鋼矢板Ⅲ型は今回施工した管路上部に並走する汚水管の人孔施工時に残置されたもので、その6箇所全て掘削する全断面に障害となる高さで施工を行いました。
推進掘削が始まり最初は通過立坑をクリアしなければなりません。砂礫層で崩壊生の高い地層だった事と、大阪臨海線に近接することもあり、より安全な水中での鏡切作業、到達発進共に行うことにしました。
その通過後まもなくで最初の障害物(鋼矢板)に遭遇しました。まず前方探査の波形が反応しだし、最初は青色の波形が、緑の波形、赤色の波形に変化し近接している事を警告しました。
今回搭載した前方磁気探査は掘進機の両端(左右方向)で検知し、前方2m~1mで青色、1m~0.5mでオレンジ色、0.5m以内で赤色に変色するようになっています。現場では両方のセンサーがほぼ同じ波形で同じ色を表示しましたので、掘削全断面にわたり障害物が存在する事を把握しました。
障害物(金属)は鉄粉状態にして掘削土砂と一緒に排出します。切削用カッタービットやカッター形状、切削メカニズムに関しては一切公表できません。切断(切る)ではなく“削る”という作業を行います。
地上実験では1cmから3cm角程度の切削片(金属片)だったのですが、改良を重ねた結果、現場での排出状態はまさに鉄粉状態でした。掘削土砂と混合しているため、目視ではまったく分かりません。排泥タンク内に手を入れると“チクチク”と痛く、皮手袋でなければ触ることが出来ませんでした。確認のために磁石をタンク内に入れどの程度の鉄粉なのかを確認しました。
写真では分かりにくいですが、まさに“砂鉄”状態です。ここまで細かくなれば泥水式でも輸送できそうですが、排泥比重が高くなるためやはり泥濃式の真空輸送方式がもっとも適切だと思います。鉄の比重が約7.8程度なので通常使用している排泥タンクの容量にも注意が必要です。掘削土砂の比重は1.4~2.0程度なので約4倍もの重量となり、通常掘削時のように満タンに入れることは出来ません。超低速で切削作業を行うため、掘削土砂はほとんど排出しませんし、高濃度泥水材と障害物(鉄粉)のみとなりますので、実際現場で計測した比重は6.0~7.0程度と高比重です。実質、真空輸送ではなく礫等を搬送する台車にて搬送したと聞いており、その分別が大変だったようです。掘進機内で使用できる強力な電気磁石の開発も必要かな?です。障害物を切削する時の音は、最初センターホール開口時の金属音“キーキー”と聞えますが、そのうち“シャーシャー”と聞こえてきます。通常の掘削音は礫層でない限り、電動機の音にかき消され分かりません。礫等の場合に聞える“ギーギー”といった耳障りな音とは違い、氷を削るような音に近く私にはなんとも心地よく聞えます。
切削音“シャーシャー”という音が無くなると障害物を切削し通過した事になるのですが、まだ前方探査が反応(障害物があります)したままになっていました。これは障害物(金属)が掘進機に埋め込まれた発信コイルと受信コイルを通過するまでは反応するためで、障害物(金属)があるためではありませんでした。次の障害物までの距離は5m程度あり、さらに掘削(推進)を行うと次の障害物反応がありました。2回目と3回目の障害物間は1m程度と連続していましたが、最初の切削同様、最終6回目の障害物(鋼矢板Ⅲ型)を切削し無事到達しました。到達の際には、電磁波誘導測量装置(ネオジャストシステム)を使用し到達まで掘進機を誘導し、高精度で到達することが出来ました。 。
障害物通過後には2液性固結滑材を注入し、推進管と障害物間に発生する抵抗力を軽減させます。推進延長432mの最終推進力は1200kNでした。また、この現場は昼夜間施工(16時間2班施工)で行い、約3ヶ月の短期間で完了することが出来ました。
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